映画「誰も知らない」
1980年代に実際にあったネグレクトの事件を元に製作された映画。
置き去りにされた子どもたち4人の、生きる日々。手を差し伸べる大人は、この作品の中にどこにもいなかった。
次第に電気ガス水道も断たれてしまう一室で、母はもう戻ってはこないことを悟りながらも長男の明は弟妹たちと懸命にただただ日を繰り返す。やりたいこと、友達、学校、誰かに名前を呼ばれるということ…それらから遠い遠い場所に置かれてしまった子どもたち。
世の中の罪は、とても重い。
もしも当時よりも児童虐待に対して敏感になってきたこの時代だったら、大人は気が付いたのだろうか。
見て見ぬ振りを、しなかっただろうか。
観ていて、保護されて衣食住が確保されて欲しいという思いに溢れたが
保護されたら4人が一緒に暮らせなくなる、と助けを求めることを明は拒絶していた。
答えの出ない問いが頭の中をぐるぐると回り続ける映画だ。
映画「39 刑法第三十九条」
とても気になるテーマだったので観た。
独特の雰囲気がある映画。
生々しくて、緊迫していて、哀しくて、始終そんな雰囲気がずっと漂っていた。
鈴木京香の演技も惹き込まれたし、その役である香深の精神鑑定、向き合う様も凄い。
堤真一の演じる柴田の不可解さ、深い哀しみ、とても胸が痛くて観ていて辛かった。一連の動きに共感はできないけれど、ただ抱えるものがとても悲しかった。
刑法第39条のことを知ってはいても深く考えたことなどなかったので、考える機会をこの映画がくれた。
岸田一徳の表情は、嫌ではない。あれはあれで、この映画の独特さに一味添えてるような。
真面目な面持ちの刑事だったら味気ないなーと思うので。
素朴な疑問
なぜ、江守徹の検事、樹木希林の弁護人、小声で早口にゴニョゴニョと書類を読むのかな。やる気無さそうな検事だな、と思ったら弁護人までそうしたから、何か意味があるのか…
映画「昼顔」
ドラマには世界観に惹き込まれて観ていた、昼顔。
映画化の時、とても観たかったのだけれどタイミングを逃したままで、ようやくAmazonPrimeで観ることができた。
ドラマとはまた違った空気感のある作り。
サワの身勝手さが目立つように思ったけれど、ドラマでの最初の頃は控えめで平凡なタイプだったサワが、キタノ先生と出会って惹かれてからは、どんどん覆っているものが剥がれていくかのように本能が見えて突き動かされるようなサワになっていたから、
映画でのサワは、全てを失って新しく生活を始めているにしてもすでに本能が解放済みの状態だったんだろうと思えた。
だから会いに行ってしまうところからのサワの本能のままの行動は、かえって潔く、愛に向かって真っ直ぐに感じられた。
人を傷付けてまで愛を繋げたのに中途半端にグジグジしているとしたら傷付けた人たちに対して尚さら屈辱的で酷い女になってしまう気がする。
だから、愛に正直に、タブーを越えるし嫉妬もするし渡したくないという欲望のままのサワ、で良かったんだと思った。
そんなサワに対するノリコも、あの全開の感じでいい。
立場は違う2人の本能と本能。
見終わった後は胸の中が重たくて、言葉が簡単には出てこなかった。
サワとキタノ先生の形が善いとか間違いとかよりも
人間と人間という見方をすると、サワもノリコもとても魅力的な女性だと思った。
個人的にはあの海辺のオーナーが好きだなぁ。
また観ようとは、重過ぎてとても思えないけれど
3人の結末を観れて良かったな、と思う。